鳥肌実(42歳厄年)

知るひとぞ知る、という人間は多数どのジャンルにもいるが、最もその言葉が頻繁に使われるのは「笑い」の世界ではないだろうか。マニア受けでほそぼそと活動する芸人、ネタが危険すぎてメジャーな舞台に立つことが許されない芸人、単に面白くは無い芸人、さまざまな理由があろうが、まだメジャーではない人間に対して用いられる言葉である。今回取り上げる鳥肌実氏は、その芸風からテレビには出づらいし、それゆえに「知るひとぞ知る」、そう呼ばれる一人だ。
平成6年のライブを皮切りに、鳥肌実氏は表立った活動を開始する。氏の芸風、信条を氏自身の言葉で紹介しよう。
「私は右翼ではない、国家を愛し、天皇を崇拝しているだけだ。皇居に向かって敬礼!」
…さあ、どうだろうか。最近はニュース23で取り扱われたこともあり、知名度がグンと上がったためにご存知の方もいらっしゃるかも知れないが、「欲しがりません勝つまでは。」、「南無阿弥陀仏」と書かれたジャケットを羽織り、街宣演説を繰り広げる人間だ。筑紫哲也に、「思想が笑いにねぇ…。」と失笑せしめた豪傑である。
彼のパフォーマンス、つまり大演説会は常に大盛況となる。その山場は軍事演説、その怒涛さは他を圧倒する。客をも圧倒する。スタッフも圧倒するし、警備人も火炎瓶が飛んでこないかと圧倒されている。彼の目的は大日本帝国の再建であり、「私は大日本帝国に生れたかった!」と大主張を展開する。
ヒットラー三島由紀夫を敬愛している。竹やりでB29を落としたと豪語する。日本に必要なのは軍艦だと断言する。はたして氏が万人に受け入れられるかというと、そりゃあ無理だろう。氏がゴールデンにレギュラー出演することもないだろうし、オンエアバトルにでるはずもない。出させてもらえない。
前回のライブでは、竹やりに乗って宙へ浮いたらしい。それでB29を撃破ということだ。話題にはことかかない近年ずば抜けたアウトロー芸人だが、実際はとても小心で普通の人らしい。まあえてしてそういうものだろう。『ゆきゆきて進軍』の奥崎氏は普段からああらしいのだが、鳥肌氏は芸人である。
そのためのパフォーマンスであるから、刺されることはないし、また角材で足を集中的に狙われることも無い。氏のパフォーマンスをテレビで目にすることはスカイパーフェクトTVや有線でないとキツイと思われるが、発言等はホームページや雑誌連載で読むことが出来る。