森見登美彦『四畳半神話大系』 太田出版

長年お世話になっている編集者から唐突にメールが入り、『四畳半神話体系』とやらを読めとのこと。利害関係もないようで、珍しいこともあるもんだと即購入。
読了。とりあえず友人知人他人7名に薦め自分を含め8冊の売り上げに貢献した。


冒頭、細かいギャグ比喩もウマが合わず嫌な予感がしたが、700枚を飽くことなく一気に読み終えた。ひどくリーダブルではあるが、読んでる背中を待ち針でとめられるしつこい痛みを受け続けることとなる。
なじめないギャグが積もるなか、ふいに仲間うちに引き込むような笑いどころに捕まる。ああこういう調子のバカセリフ口にするなぁ。ただ基本的には会話もリアルに感じられるところではない。もちろんわざとなんだろう。
構造は、ふーん、という程度。構造の技術よりもうんうんその妄想、という感じ方をする。
それなのになぜ私が入れ込んでしまったかというと、エピソードや思考回路が自分の大学生活と尋常じゃないシンクロをみせたからで。サークルのパワーゲーム、箱庭の権力闘争、なんと空虚で楽しい大学生活!
振り返るとバカをみる。私も3年生のときにそれまでの大学生活を振り返っていたらきっとこの主人公と同じ目にあっただろう。id:erohenさんがid:erohen:20041229で非常にステキな評をしてくれている。そう、私がこの小説に感じるものは、単にサークルの人間関係ゲームが自分がやってきたこととまるかぶりしていたからってだけじゃない。まさに過ぎ去った青春! いや、青春は過ぎ去って初めて生まれるもの。これが背中にうたれた待ち針の痛み。
技巧を突き抜け、またリアリティはないもののリアルにわが身を突くこの感触こそが青春小説の肝腎だ。インターネットもドラッグも出てこないこの小説がなぜに現在の青春小説となりえているのか。