村上春樹『1Q84』を読むということ

村上春樹の新作『1Q84』が5月29日に発売される。予約殺到で1,2巻それぞれ5万部の増刷が決定したとのこと。

初版は1巻20万部、2巻18万部で、各5万部の増刷。同書の内容は、著者の「予断を持たずに読んでほしい」との意向で明らかにされていない。
http://www.sanspo.com/shakai/news/090526/sha0905261358010-n1.htm

小説を読むという行為はどこから始まるのだろうか。もちろん本編テクストを読むことから始まると言えるだろうけれど、書物として考えたら装丁や帯の文章を読み取ることも小説を読むことに含まれるかもしれないし、ウェブでのレビューや雑誌・テレビでの紹介を受容するところから解釈は始まっており、その小説は読まれ始めていると言えなくもないんじゃないか。
著者が「予断を持たずに読んでほしい」という意向を持っていても、「村上春樹」という著者名と「1Q84」というタイトルは既に読まれている。過去の村上春樹の小説を想起して読む人もいるだろうし、本編を読む前から1984年という直球なイメージを何かしら持つ人もいるだろう。
人によっては、書店に張り出されるポスターからも、「新潮社」という版元からも、その公式サイトに載せられているという一文から何かの「予断」を読み取る人もいるだろう*1。「予断」を全く持たずに読むことは不可能に近い。前情報は最低限に留めてほしいというメッセージすらも、そういう著者の意図があるという「予断」に読まれかねない。

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 2

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1984年 (小説) - Wikipedia
アイドル写真集で言うと、「中身は秘密です。予断を持たずに読んでほしい」というアイドルはまずなさそうで、雑誌には先行グラビアが載り、本人ブログでは撮影時の話題で盛り上がり、ウェブ書店には煽り文句売り文句がアップされて、むしろ余程のファンでない限り3000円という価格をほいほい出せるわけでもなく、これだけ観れたらもう本編買わなくていいやと思われない程度の「予断」を露出して写真集を買ってもらわなきゃいけない。
もちろんその場合でも、誰の写真集かというアイドル名は、解釈のための最大のパラテクストとなるはずで、その他にも写真家や版元、発売のタイミングなんかも、アイドル写真集を受容する上で大きなキーになっているはずだ。

27日追記

今日にはフライングされてました。書店を観察してると、15分ぐらいで入荷の問合せ電話が3件ぐらい。平積みの実物を前にして、軽く驚いた調子で手にとる人もみかけた。観察中は軽快に売れてる感じを受けたけど、実売の様子はどんなんだろう。